レストラン・ドミトリーゑん

ブラジルのビーチリゾート・NATALでインド・タイ料理レストランとドミトリーを営む日本人家族の毎日。

ガイヤーン巻き寿司

日々、改装工事や畑仕事ばかりをやっていたのでは

お金は出ていくばかりだ。

 

レストラン開店前のオレらの収入源は、

巻き寿司屋さん。

 

売りのスタイルは、店舗をかまえて、ではなく、

立ちんぼ、でもなく、

ビーチを売り歩いておるのだ。

練り歩いておる、と言い換えてもいい。

ちんどん屋のようにド派手なナリで歩きよるんよ。

 

オレはビキニ。

これはビーチではいちばん地味な服装といえよう。

だってビーチにおる人はみんな水着やもん。

キャンペーンガールのつもりで、ビーチにきているお客さんに

つぎつぎと声をかけて歩く。

「美味しい巻き寿司、いかが?」っちゅうて。

 

夫は、作務衣に酒蔵の前掛け。

紺地に白で漢字で酒の名がでかでかと書いてあるので、とても目立つ。

頭には、手ぬぐいを巻いて、ますます日本っぽさを醸し出しておる。

商品を入れた発泡スチロールを抱えて歩く。

いちばん肉体的にしんどいのは、この役目であろう。

 

そして娘は、浴衣を着てゆく。

この衣装はビーチのブラジル人たちに、とても人気がある。

寿司が売れる数よりも、

「いっしょに写真に写ってください」と頼まれる数のほうが多い。

あまりにも写真撮影ばかり乞われるので、

昨今では『写真撮影・100円』くらいもらおうかと思うとるぐらいだ。

で、娘の役目は、ガイヤーン巻き寿司とは何か、っちゅう説明係。

彼女はオレら家族のなかでいちばんポルトガル語が上手いのだ。

 

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さて。

どんな具の巻き寿司を売っているかというと、

今後オープンするレストランのメニューに出す『ガイヤーン』を

どどーーーんとたっぷり入れてまいている。

 

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ガイヤーンとは、鶏肉のタイ料理である。

ココナッツやターメリックなどの独特のスパイスに浸けた鶏肉を

皮はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上るように丁寧に焼く。

 

これが、酢飯と意外と合うのだ。

意外どころか、ものすごく美味い、と評してよかろう。

最初はただ珍しがられて買われていたガイヤーン寿司も、

いまではファンがつくほどにビーチで認知されるようになったのだ。

 

ガイヤーン寿司をビーチで売り始めて2年弱。

ビーチといっても、近所のビーチのみなのだけれど、

近所のビーチは、ナタールでも人気があるので、

土日ともなれば、市内からも遊びにくる人が多い。

 

先日は、市街地のショッピングセンターで、知らない人に声をかけられた。

「今日はSUSHIは売ってないの?」って。

 

「カムルピン(うちの近所のビーチの名)で、いつも買うのよ。

 また行くわね」と、言われて、とてもうれしかった。

やる気がみなぎるよなぁ。

 

 

そのやる気は、オレの巻きにあらわれることになる。

ガイヤーンをたっぷり入れたいあまり、

寿司がぎゅうぎゅうづめになるのだ。

こんな太い太巻きみたことない! と、夫はあきれておる。

海苔がはちきれて破れそうになっとるやんか! と、娘も眉をひそめる。

 

これでいいのだ!! と、

きょうもぎゅうぎゅうのぶっとい巻き寿司をこしらえるオレ。

 

レストランをオープンしたあとも、

元祖メニューとして、『ガイヤーン巻き寿司』を提供しようかなぁ、と

考えとるんよ。

 

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