便器がない!
オレら家族がブラジルに暮らしはじめて7年。
現住所のナタールに移ってきて2年が経つ。
ここナタールにて、レストランを開店するのが目的なのだが、
2年も経過しとるっちゅうのにまだ開店できとらんのは、
改装工事に時間がかかっとるからだ。
住居をかねてレストランをやるこの家屋は、
引っ越してきた当初、ほんとにほんとにおんぼろで何もなかった。
ただ古い、っちゅうだけでなく、
窓があったであろう壁には、穴が開きっぱなしやし、
扉はぐらぐらしとるんよ。
台所であっただろう場所には、シンクすらなく、
何よりいちばんびっくりしたのは、トイレであっただろう場所に
便器がなかったことだ。
ブラジル全般がどうなのか、は解らんばってん、
ここノルデスチ地方では、なんにもないがらんどう状態から工事が始まることが
一般的であるようだ。
おおむねブラジル人はのんびり屋さんなのが、
ここ東北は気候が年中暑いこともあり、人々はたいへんゆっくりの速度で
心身を動かしておるようなのだ。
そんなノルデスチーノのペースにあわせて、
のっこらのっこら工事を進めてきたオレら。
水は、井戸水なので、すぐに使うことができたから、
外のホースにて調理をし、水浴びをし、
トイレは・・・・・(このてんてんてんてんのなかに万感の思いを含んでおる!)
っちゅうとこから
スタートしたオレら家族。
便器を買ってトイレに取り付け、
その便座に座った日のことは忘れられん。
プライベート空間にて排泄できるしあわせ!
文明社会にようやくカムバックした喜び!
便器を設置し、洗面台を取り付け、
台所の流しをこしらえて、電気を配線し、
温水シャワーがでるようになり、窓とドアを取り付け・・・
すこしずつすこしずつ、工事を進めてきて、
今は、鍵のかかるドアと窓にて、雨漏りになやむことなく安眠できておる。
工事の苦労話は、おいおい書きたいと思う。
奇想天外で面白い事もいっぱいこっぱいあった。
勉強になったし、大工さんには転職できんやろうばってん
大工助手くらいならやれるのでは、っちゅうくらい経験させてもろうたもん。
屋根にのぼり、セメントを練り、レンガを積み、
ドリルでねじをバキュンバキュン撃ち・・・は、せんかったけど、
血肉をけずるような心意気で挑んできた改装工事を経て、
いまの安泰な暮らしがある。
ばってん、
2年前の窓もなくお湯もでらん原始的な暮らしがなつかしくもある。
いまも時々、そんときのことを忘れんように、
お外で・・・・(この・・・・のなかには極秘事項が含まれとる)。